背景
- GLP-1受容体作動薬(GLP-1RAs)は、2型糖尿病患者の心血管および腎臓のアウトカムを改善することが知られているが、この改善が血糖値(HbA1c)の低下によるものか、それとも体重減少によるものかについては議論があった。
- 本研究は、最新の大規模臨床試験(FLOWおよびSOUL試験)のデータを組み込み、GLP-1RAsの心血管・腎臓アウトカムと、HbA1cおよび体重減少との定量的な関係を評価することを目的とした。
目的
GLP-1RAsのプラセボ対照無作為化試験のデータを用いて、心血管および腎臓のアウトカムと、HbA1cおよび体重減少との関連性をメタ回帰分析により評価すること。
方法
- PubMedおよびEMBASEを検索し、2型糖尿病成人を対象とした、主要有害心血管イベント(MACE)を報告しているプラセボ対照のGLP-1RAs試験を抽出した。
- 合計10件の試験から、73,263人の患者のデータが組み入れられた(FLOW、SOUL試験を含む)。
- 主要評価項目はMACE(心血管死、心筋梗塞、脳卒中の複合)であり、副次評価項目は心不全による入院および腎臓の複合アウトカムとされた。
- ランダム効果メタアナリシスに続き、HbA1cと体重減少との関連性を評価するメタ回帰分析が実施された。
結果
- MACEリスクの減少: GLP-1RAsはMACEを14%減少させた(ハザード比0.86; p < 0.001)。心不全による入院および腎臓の複合アウトカムも有意に減少させた(いずれもp < 0.001)。
- HbA1cとMACEの関連: メタ回帰分析の結果、HbA1cが1%余分に低下するごとに、MACEのハザード比が27%低下するという、有意な比例関係が示された(p = 0.015; R2 = 0.61)。
- 体重変化との関連: 体重変化は、MACEを含む分析されたどのエンドポイントとも有意な関連性は示されなかった(MACEについてはp = 0.13; R2 = 0.21)。
結論
- GLP-1受容体作動薬によるMACEリスクの低減は、体重変化ではなく、HbA1cの低下と有意かつ比例的に関連していることが示された。
- HbA1cの低下は、2型糖尿病患者におけるGLP-1RAsによる心血管改善の有用な代用指標として機能しうる。
リンク