英国における慢性呼吸困難に対するモルヒネ(MABEL):多施設共同、並行群間、用量漸増、二重盲検、プラセボ対照無作為化試験

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背景

  • 慢性呼吸困難に対するオピオイドの有効性は、基礎研究では示唆されていたものの、これまでの臨床試験では再現されていなかった。
  • 本研究は、長期にわたる疾患に起因する呼吸困難(息切れ)に対する経口モルヒネの有効性を評価することを目的とした。

目的

心肺疾患による慢性的な呼吸困難(修正Medical Research Councilスコア3以上)を持つ患者に対し、経口持続放出型モルヒネプラセボと比較して、息切れの最悪強度を軽減するかどうかを評価すること。

方法

  • 英国11施設で実施された、第3相、並行群間、二重盲検、プラセボ対照試験。
  • 参加者は、経口持続放出型モルヒネ(5〜10 mgを1日2回)またはプラセボ(盲検化された下剤を併用)のいずれかを56日間投与する群に1対1で無作為に割り付けられた。
  • 主要評価項目は、28日目における過去24時間で最悪の息切れスコア(数値評価スケール[NRS]; 0=全く息苦しくない、10=想像しうる最悪の息苦しさ)とされた。

結果

143人の参加者が組み入れられた(平均年齢70.5歳、男性66%)。

主要評価項目(最悪の息切れ強度)

28日目の最悪の息切れスコアにおいて、モルヒネ群とプラセボ群の間で差のエビデンスは認められなかった(調整平均差 0.09; p=0.78)。

副次的評価項目
  • 咳: 56日目において咳の改善が認められた(調整平均差 -1.41)。
  • 身体活動: 28日目において中程度から活発な身体活動量の増加が見られたが、多重比較補正後は有意ではなかった。
安全性
有害事象
  • モルヒネ群はプラセボ群と比較して、有害事象(251件 vs 162件)、重篤な有害事象(15件 vs 3件)、および治験薬の中止(13件 vs 2件)が多く発生した。
  • 治療関連の死亡はなかった。

結論

  • 本研究では、経口モルヒネが最悪の息切れ強度を改善するというエビデンスは認められなかった。
  • モルヒネが慢性呼吸困難に対して役割を持つかどうかを理解するためにはさらなる研究が必要であるが、現在の知見は、この設定でのモルヒネの使用を支持しない。