背景
- 体外衝撃波結石破砕術(SWL)は、術後の感染症リスクを伴う。
- 術後の抗菌薬予防投与に関する国際的なガイドラインの推奨は矛盾しており、エビデンスの確実性が低いため、臨床医の間で抗菌薬の使用が一定していない。
- 本研究は、抗菌薬の予防投与が、SWL後の菌尿および尿路感染症(UTI)を減少させるかを調査することを目的とした。
目的
尿路結石症に対するSWLを受ける成人患者に対し、抗菌薬の単回投与(シプロフロキサシン)が、プラセボと比較してSWL後の菌尿や症候性UTIの発生率を減少させるかを検証すること。
方法
- 国際的な多施設共同、盲検化された無作為化比較対照試験(APPEAL試験)。
- 尿路結石症に対しSWLを受ける成人患者1,722人を、シプロフロキサシン単回投与群またはプラセボ群に無作為に割り付けた。
- 主要評価項目は、SWL後の菌尿(症状なし)または症候性UTIの複合発生率とされた。
結果
主要複合アウトカム
シプロフロキサシン群で2.7%、プラセボ群で3.9%に発生したが、リスク比は0.68であり、統計的に有意な差は認められなかった(95%信頼区間: 0.41–1.15)。
症候性UTI
症候性UTI単独でも、シプロフロキサシン群(1.3%)はプラセボ群(2.7%)に対し、減少傾向が見られたが有意差はなかった(RR 0.49)。
腎盂腎炎
シプロフロキサシン群で腎盂腎炎の発症はゼロであったのに対し、プラセボ群では9人(1.2%)に発症した。これは有意なリスク低減を示している(RR 0.05; p=0.003–0.93)。
安全性
尿路敗血症を発症した患者はおらず、重篤な有害事象も発生しなかった。
結論と臨床的意義
- シプロフロキシシンの単回投与は、SWL後の腎盂腎炎のリスクを減少させたが、その絶対的な利益は控えめである。
- このリスク減少の重要性は、抗菌薬使用に伴う潜在的な有害事象や耐性菌発生の懸念を考慮し、患者個人の希望によって判断される。
- APPEAL試験の結果は、SWLを受ける患者に対する世界的な診療と、エビデンスに基づく意思決定を裏付けるものとなる。
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