Olezarsen, Acute Pancreatitis, and Familial Chylomicronemia Syndrome

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38587247/

背景
家族性カイロミクロン血症は、遺伝性の疾患で重症の高トリグリセリド血症および急性膵炎を伴う
オレザルセンは、アポリポタンパクC-IIIの肝臓での合成を抑制することでプラズマトリグリセリド値を低下させる

方法
第3相、二重盲検、プラセボ対照試験
遺伝的に確定した家族性カイロミクロン血症患者を、オレザルセン80mg群、50mg群、プラセボ群に無作為に割り付け
53週間にわたり4週間ごとに皮下注射投与
主要評価項目は、ベースラインから6ヶ月後の空腹時トリグリセリド値の変化率の群間差(80mg群vsプラセボ群、50mg群vsプラセボ群)
副次評価項目は、アポリポタンパクC-III値の変化率、急性膵炎発症率など

結果
66人がランダム化され、80mg群22人、50mg群21人、プラセボ群23人
ベースライン平均トリグリセリド値は2630±1315 mg/dL、71%が過去10年以内に急性膵炎の既往あり
6ヶ月後のトリグリセリド値低下率は80mg群で-43.5%(P<0.001)、50mg群は-22.4%(P=0.08)
アポリポタンパクC-III値低下率は、80mg群で-73.7%、50mg群で-65.5%
53週時点で、プラセボ群で11例の急性膵炎発症、オレザルセン群で各1例(ハザード比0.12)
80mg群で4例の中等度の有害事象が認められた

結論
家族性カイロミクロン血症患者において、オレザルセンはプラズマトリグリセリド値を低下させる新しい治療薬となる可能性がある

【有効性】
オレザルセン80mg投与群では、プラセボ群と比較して6ヶ月後の空腹時トリグリセリド値が43.5%有意に低下した
50mg群では22.4%低下したがプラセボ群との差は統計的に有意ではなかった
したがって、オレザルセンの適正用量は80mgと考えられる
アポリポタンパクC-III値も80mg群で73.7%、50mg群で65.5%と顕著に低下した
53週時点での急性膵炎発症率は、オレザルセン投与群でプラセボ群の約1/8に抑えられた

【安全性】
80mg群で4例の中等度の有害事象が認められたものの、全体的には忍容性は比較的良好と考えられる

【臨床的位置づけ】
家族性カイロミクロン血症は重症の高トリグリセリド血症を呈し、急性膵炎の危険が高い難治性疾患
現在は食事療法が主体だが、根本的治療になり得ない
オレザルセンは トリグリセリド異常に直接作用する新規作用機序の治療薬であり、本疾患に有用な治療選択肢となり得る

【今後の課題】
長期の有効性と安全性を確認する必要がある  
費用対効果など、実臨床での位置づけを検討する必要がある