まとめ:
非ST上昇型急性冠症候群(NSTE-ACS)に冠動脈バイパス術(CABG)の既往がある患者における、侵襲的治療と保存的治療の効果を比較したランダム化比較試験(RCT)のメタアナリシス。11のRCTから得られた897人の患者(侵襲的治療群477人、保存的/選択的侵襲的治療群420人)のデータを解析した。追跡期間の加重平均は2.0年(範囲0.5-10年)でしあった。主要評価項目は、全死亡、心臓関連死亡、心筋梗塞、心臓関連の入院でした。ランダム効果モデルを用いて、リスク比(RR)と95%信頼区間(CI)を算出した。その結果、侵襲的治療は、全死亡(RR 1.12, 95% CI 0.97-1.29)、心臓関連死亡(RR 1.05, 95% CI 0.70-1.58)、心筋梗塞(RR 0.90, 95% CI 0.65-1.23)、心臓関連の入院(RR 1.05, 95% CI 0.78-1.40)のいずれも減少させなかった。
解説:
1. この研究は、NSTE-ACSに関する侵襲的治療のRCTにおいて、CABG既往患者が十分に代表されていないことを確認している。これは、現在のガイドラインの根拠となった主要なRCTがCABG既往患者を除外していたためである。
2. メタアナリシスの結果から、CABG既往患者におけるNSTE-ACSの治療について、侵襲的治療は保存的治療と比較して主要な心血管イベントの減少につながらないことが示唆された。これは、CABG既往患者において侵襲的治療の有益性が不確実であることを意味する。
3. 本研究の限界 → 解析に含まれた患者数が比較的少ないことや、元の試験が侵襲的治療の効果を評価するためにデザインされたものではないことなど。
4. 研究の著者らは、これらの結果を検証するために、CABG既往患者に特化した十分なサンプルサイズのRCTが必要だと主張している。
5. 本研究の結果は、NSTE-ACSを発症したCABG既往患者の治療方針決定に重要な示唆を与えるものである。現在のガイドラインが推奨する侵襲的治療の有効性が、この特定の患者集団では不確実であることを示している。
6. CABG既往患者のNSTE-ACS治療について、患者個々のリスクと利益を慎重に評価し、治療方針を決定する必要がある。